長年にわたる先進医療の現場で培った臨床経験を活かし、泌尿器開業医として地域医療を担う
はじめに、林先生が医師を志したきっかけと、泌尿器科を専門とされた理由をお聞かせください。
父が歯科医師でしたので、子どもの頃から「いずれは自分も医療系の仕事に就くのだろうな」と思っていました。最終的に進路を決めるときに、「歯科医師ではなく医師を目指したほうがよい」という父のアドバイスを受けて、医学部に進みました。
泌尿器科を専攻したのは、高齢化が進んでいる中で、これからますます泌尿器疾患の患者さんが増え、泌尿器科医が果たす役割も大きくなっていくだろうと考えたことが大きいですね。しかも泌尿器科は、薬物療法を始めとする内科的な治療だけでなく、内視鏡や腹腔鏡、開腹など外科的治療も行います。もともと外科手術に興味があり、心臓外科や消化器外科に進むことを考えた時期もありましたので、広く深く掘り下げていく泌尿器科にやりがいを感じたことも専攻した理由の一つです。
実際、高齢化に伴って泌尿器疾患の患者さんがとても増えているそうですね。
そうですね。男女問わず、泌尿器科を受診される患者さんは増え続けています。それに伴って、外科治療では、内視鏡下手術や腹腔鏡下手術に早くから取り組んだり、ロボット支援下手術もいち早く取り入れたりなど、泌尿器科は患者さんに負担の少ない低侵襲医療がもっとも進んでいる診療科と言えます。そうした中で私自身も長年、研鑽を積んできました。
開業されるまでの林先生のご経歴を教えてください。
外科手術については、開腹手術だけでなく、内視鏡下手術や腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術にも携わり、開業するまでのここ10年ほどは、横浜市立大学附属病院前立腺低侵襲治療センターで、前立腺がんに対する低侵襲治療「密封小線源治療(ブラキセラピー)」という先進医療に従事してきました。
※1 日本泌尿器科学科泌尿器科専門医
密封小線源治療とは、どのような治療なのでしょうか?
前立腺がんの密封小線源治療は、弱い放射線を出す小さな線源(シード)を前立腺内に埋め込み、前立腺の内部から放射線を照射する治療法です。主に早期の前立腺がんに適応する治療法で、入院期間が短く副作用が少ない上に、前立腺の全摘手術と同等の治療効果が期待できるとして、十数年前から普及している低侵襲治療です。
横浜市立大学大学院進学、米国留学を経て、長年、先進医療に携わってこられ、准教授の要職も担われてきた林先生が、開業を決意されたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?
開業医の道を選んだのは、一言で言えば、後進に道を譲るタイミングを感じたことがきっかけでしょうか。ちょっとカッコつけすぎですかね?(笑)
これまで、大学院や米国留学では、主に尿失禁や男性の性機能に関する研究に取り組み、横浜市立大学附属病院前立腺低侵襲治療センターで携わってきた前立腺がんの小線源治療件数は、この20年で約2000例にも及びます。それだけに、先進医療の現場から離れることに一抹の寂しさもあったのですが、泌尿器医療のさらなる発展には若い力が必要です。それに加えて、医療技術の進歩に伴って、大学病院や総合病院でなくても泌尿器科クリニックでもできることが増え、基幹病院の医師の働き方改革も始まっています。
「泌尿器科開業医の果たす役割がますます大きくなっている中で、豊富な臨床経験を地域医療に役立てたい」と考え、前院長からお声がけいただいたのをきっかけに開業を決断し、2024年6月より当院を運営しています。