更新日: 2025-09-02

基本情報

名称:
畑肛門医院
診療科目:
肛門外科
住所:
〒 516-0072
三重県伊勢市宮後1丁目8-7

電話番号0596-28-2260電話
する

切れ痔、いぼ痔、痔瘻から便失禁まで幅広く診療。「なるべく切らない治療」で、排便機能温存や術後後遺症の予防に努める

現在は、どのような患者さんが多く来院されていますか?

畑 嘉高先生の写真

当院では、お尻の病気、特に「痔」の診療を専門的に行っています。痔は、大きく分けて、肛門にできものができる「いぼ痔(痔核)」、肛門が切れる「切れ痔(裂肛)」、肛門に膿がでる穴ができる「あな痔(痔瘻)」に分類されますが、来院される患者さんの多くが、これらのいずれかに該当します。
痔は年齢や性別に関係なく発症するため、患者さんの層は非常に幅広いですね。中には、生後数か月の赤ちゃんから、90代のご高齢の方まで来院されることもあります。

また、「肛門のまわりがかゆくて仕方がない」「気づかないうちに便が漏れてしまう」といった、痔以外の肛門トラブルについてご相談に来られる方もいらっしゃいます。

小さなお子さんでも、痔になることがあるのですか?

はい、実はあるんです。子どもでも大人でも、痔の大きな原因は「便秘」と「下痢」なんです。便が硬くなることで、肛門が切れてしまう「切れ痔」を起こすケースも珍しくありません。
そういった場合には、まずは「便をやわらかくすること」が大切です。ご家族には、食物繊維や乳酸菌など、腸内環境を整える食品を意識的に取り入れてもらうようアドバイスしています。

それでは、痔の治療について詳しくお聞かせください。

軽症の方には、まず便秘や下痢を予防するための生活習慣や食事内容についてアドバイスを行い、塗り薬などを使いながら経過を見ていきます。特に食物繊維や水分の摂取、腸内環境の改善といった基本的なケアが、症状の軽減につながることも多いです。
一方で、症状が進行していたり、生活習慣の改善だけでは対応が難しい場合には、外科的な治療が必要になります。当院では、日帰り手術と入院手術の両方に対応しており、患者さんの症状や生活スタイルに合わせて、適切な治療方法を提案しています。

貴院が得意とされている「なるべくメスで切らない」痔の手術について教えてください。

具体的な例ですと、いぼ痔の手術の場合、一般的に行われているのは「結紮切除術」と呼ばれる方法です。これは、いぼ痔をメスで切除し、傷口を縫い合わせるというものですが、適切に行わないと傷口が硬くなりやすいというデメリットがあります。
そのため、当院では「分離結紮法(ぶんりけっさつほう)」という方法を採用しています。この術式は、いぼ痔の根元を糸でしっかりと縛り、血流を止めることで壊死させ自然に脱落させるというもので、基本的にメスを使わないため、傷口が柔らかい状態で治癒しやすいことが特徴です。
肛門は排便のたびに伸縮する器官ですので、傷が硬くなると、その動きに支障をきたし、違和感や排便障害などのトラブルを引き起こす可能性があります。分離結紮法では、そうした機能的な問題を回避しやすく、日常生活への影響も最小限に抑えられるのが大きなメリットです。

貴院の治療は、排泄機能の温存を重視されているということでしょうか?

畑 嘉高先生の写真

その通りです。肛門は、「肛門括約筋」という筋肉によって便やガスがうっかり漏れないようにコントロールされています。
たしかに、痔を切除して縫合すれば症状は改善されますが、もし手術によって肛門括約筋にダメージが及んでしまうと、肛門のしまりがゆるくなったり排便がしづらくなったりして、術後の生活に支障が出る可能性があります。

たとえば痔瘻の手術治療では、一般的に瘻管(ろうかん)を切除する際、肛門括約筋の一部を切る必要があります。その結果、痔瘻自体は治っても、排便に不便を感じるようになるケースがあるのです。
こうしたリスクを避けるため、当院では「シートン法」と呼ばれる治療法を採用しています。瘻管にゴム糸を通し、徐々に締めながら少しずつ治癒を促していく方法で、排泄機能を損なうことなく治療が可能なのが大きな特長です。

当院が大切にしているのは、単に症状を取り除くだけではありません。「治ったあとも快適に過ごせるか」「日常生活に支障が出ないか」といった生活の質(QOL)をしっかりと見据えた診療を行うことを、常に心がけています。