女性の診療日を設けるなど、誰もが気軽に、安心して相談できる環境づくりに努める
日々の診療で心がけていることはありますか?
肛門に関する症状というのは、とてもデリケートなものですので、多くの患者さんが「恥ずかしい」「誰にも相談できない」といった思いを抱えながら、ようやくの思いで受診されていると感じています。中には、痛みや不安を我慢し続け、限界まで我慢して来られる方も少なくありません。
だからこそ、私は常に患者さんの気持ちに寄り添い、安心して症状を打ち明けてもらえるような雰囲気づくりを心がけています。診察や治療の際には、丁寧な説明を欠かさず、「こんなことを聞いてもいいのかな」と思うようなことでも気軽に話していただけるような関係性を大切にしています。
病気だけを診るのではなく、患者さん一人ひとりの心にも寄り添う診療を――それが、私の変わらぬ信念です。
「女性外来」として女性だけの診療日を設けていらっしゃるのも、羞恥心への配慮からでしょうか?
はい、その通りです。やはり、待合室に男性がいるだけで受診をためらってしまう女性は少なくありません。そこで当院では、週に1回、女性だけの診療日を設けています。その日は、付き添いの方も含めて男性の入室はご遠慮いただき、女性が安心して診察を受けられる環境を整えています。
「他人にお尻を見せるなんて恥ずかしい」と感じるのは、当然のことだと思います。しかし、女性は月経の前後に便秘や下痢を起こしやすく、それが原因で痔を発症しやすくなります。また、出産をきっかけに痔の症状が出る方もいらっしゃいます。
さらに注意すべきなのは、痔とよく似た症状が出る大腸がんがかくれていることがあります。「ただの痔だと思っていたら、実は別の病気だった」というケースも少なくありません。
恥ずかしさや不安で受診をためらうお気持ちはよくわかります。でも、ほんの少しだけ勇気を出していただければ、私たちが全力でサポートします。気軽に相談できる場所として、女性外来を活用していただけたら嬉しいですね。
ところで、貴院はとても趣のある建物ですね。

ありがとうございます。外来診療の建物は、初代院長の時代から受け継がれてきた、築100年以上の歴史ある建物です。外観・内観ともに、当時の趣をできるだけ残しながら、必要な部分は丁寧にリフォームを施し、今も大切に維持しています。
入院棟は鉄筋の現代的な建物ですが、基本は洋室のベッドルームとなっており、快適さを重視した環境です。ただ、せっかくこのような歴史ある空間に足を運んでいただくので、建物の雰囲気を味わってもらいたいという思いから、一部には和室のお部屋もご用意しています。少しでもくつろいでいただけるよう、細やかな工夫を大切にしています。
さいごに、読者へメッセージをお願いいたします。

肛門科というと、どうしても「恥ずかしい」「行きにくい」と感じる方が多く、受診をためらってしまうケースが少なくありません。しかし、痔は決して珍しい病気ではなく、多くの方が悩まれている身近な疾患です。そして、放置することで日常生活に支障をきたすばかりか、重篤な状態に進行することもあります。さらに、痔だと思っていた症状が、実は直腸がんや肛門がんだったという例も、決して少なくありません。
だからこそ私は、患者さんが少しでも安心して受診できるような環境づくりに努めています。診察時の肌の露出は必要最小限にとどめ、プライバシーにも十分配慮しています。お悩みの内容がどんなことであっても、決して恥ずかしがらず、どうぞ気軽にご相談ください。
今後も、患者さんの生活の質を大切にした診療を心がけて続けてまいります。少しの勇気が、大きな安心につながります。悩んでいる方は、ぜひ一歩を踏み出していただけたら嬉しいです。