外科医として数多くの手術治療に従事。豊富な経験を通じて培った力を地域医療への貢献に活かしたいと開業へ
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

私の祖父が医師だったのですが、私がまだ1歳のとき、往診中に交通事故に遭い、亡くなってしまいました。もちろん、私自身にその記憶はありません。ただ、幼い頃から祖父に抱かれている写真が家のリビングに飾られていて、家族から祖父の人柄や仕事ぶりを聞くうちに、自然とその背中を追いたいと思うようになったのかもしれません。
そうして医師の道を志し、獨協医科大学に進学しました。卒業後は、当時教授を務めていた先輩からお声がけをいただき、同大学の第二外科に入局。また、大学院では肝臓がんの外科治療について研究を深め、医学博士の学位も取得しました。
総合病院の外科立ち上げにも携わられたそうですね。
はい。当時の慶和病院(現・西山堂慶和病院)の理事長からお声がけをいただき、同院外科の開設に携わって2年間診療を担当しました。その後、東京大学医科学研究所の外科移植科(当時)で腎臓移植の経験を積んだのち、イギリスにあるインペリアル・カレッジ・ロンドンの外科で2年間、大動脈瘤ステント手術を学び修練に励みました。
続いてオーストラリアに渡り、国家公務員としてニューサウスウェールズ大学の外科およびシドニー大学の血管外科で、医学生や若手医師に向けた手術教育・指導を担当しました。また、血管手術に用いられる医療機器の研究開発にも関わることができ、多角的な視点で外科医としての経験を積む貴重な機会となりました。
帰国後は慶和病院で外科部長、副院長と要職を務められました。その間、診てこられた疾患や症例について教えていただけますか?
さまざまな疾患を診ていましたが、中心となったのは消化器疾患の手術でした。特に多かったのは、大腸がんの手術です。
大腸がんの手術は、1990年代以降、腹腔鏡(内視鏡)を用いた手術が行われるようになりました。お腹に小さな穴を開け、そこから腹腔鏡や専用の手術器具を挿入して行うこの手術は、傷が小さく患者さんの身体的負担を抑えられるという大きな利点があります。ただし、モニターを通じて術野を確認するため視野が限定されやすく、また、直接臓器に触れられないため触診ができないといった課題もあります。
そこで、腹腔鏡に加えて医師の片手も腹部に挿入し、実際に臓器に触れて手術器具の操作を補佐する「用手補助腹腔鏡下手術(HALS:Hand Assisted Laparoscopic Surgery)」という術式が考案されました。私自身もこうした術式を駆使しながら、多数の症例を担当して研鑽を重ねてきました。
そして2018年に「メディカルGPクリニック横堀」を開業されました。どのような想いから開業を決心されたのでしょうか?
ダヴィンチを用いた手術は、患者さんにとって多くのメリットがあり、全国の医療機関で広く導入が進んでいるのは非常に喜ばしいことです。しかし同時に、外科医としての自分がこれからどのようなかたちで医療に貢献できるのかを、あらためて考えるようになりました。
そんなとき、ある知人から「開業」という選択肢を勧めていただいたのです。確かに、小規模なクリニックでは高度な医療機器を用いた先進的な治療は難しいかもしれません。ただ、地域に根ざした「かかりつけ医」として、住民の皆さんに寄り添い、健康を支えていくという役割もまた、非常に重要です。
そこで私は、これまで培ってきた外科医としての知識や技術、経験を地域医療に還元したいという想いから、「メディカルGPクリニック横堀」を開業する決意を固めました。
※日本外科学会外科専門医・指導医
