神経内科専門医として脳卒中などの治療に研鑽を重ねた後、地域医療の重要な役割を担う医院を継承
はじめに、先生が医師を志されたきっかけを教えてください。

当院は、1987年に祖父と父が開業しました。祖父はもともと市中病院で長年診療に携わっていましたが、定年を迎える際、多くの患者さんから「先生がいなくなったら困る」と声をかけられたそうです。その言葉に心を動かされ、生涯現役を貫く覚悟で開業に踏み切ったと聞いています。そんな祖父の背中を追い、共に診療を続ける父の姿を間近で見ながら育つうちに、自然とこの道を志すようになりました。
先生は獨協医科大学に進学し、ご卒業後は同学の脳神経内科に入局されました。どのような理由から脳神経内科を選ばれたのでしょうか?
研修医時代にさまざまな診療科を経験するなかで、特に強く関心を抱いたのが脳神経内科でした。なかでも、脳卒中の診療に深く惹かれるようになったのがきっかけです。
脳卒中は、脳の血管に異常が生じることで脳機能に障害が起こる疾患で、血管が詰まることで発症する「脳梗塞」、血管が破れることで起こる「脳出血」や「くも膜下出血」などに分類されます。いずれも命に関わる重篤な病気であり、後遺症が残ることも少なくありません。それでも、医療の進歩によって治療の選択肢は広がっており、当時新しい治療法として導入されていたのが、脳梗塞の原因となる血栓を薬剤で溶かして血流を回復させる「tPA静注療法」でした。脳卒中の診療は、患者さんの予後を大きく左右するスピードと判断力が求められる一方で、治療が奏功すれば劇的な回復につながることもあり、大きなやりがいを感じました。
勤務医時代、主に診てこられた疾患について教えてください。
足利赤十字病院、ひたち医療センター、水戸赤十字病院といった市中病院で、神経内科専門医として脳神経内科(神経内科)の領域を中心に臨床に従事しました。
脳神経内科は精神科や心療内科と混同されることも多いのですが、脳、脊髄、神経、筋肉などに生じる病気を診る診療科で、脳卒中をはじめ頭痛やてんかん、脳炎、髄膜炎、脊髄小脳変性症、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、末梢神経障害など、さまざまな疾患が対象となります。
勤務医時代はいずれの病院でも、脳卒中を中心に多様な脳神経疾患の診療にあたりました。また、足利赤十字病院やひたち医療センターでは内科の所属であったことから一般的な内科診療も担当し、多くの患者さんを診て内科診療の研鑽を重ねました。
そして2023年5月、「浅川医院」に入職し副院長に就任されました。開業医となることを決心された想いをお聞かせください。
日本の医療は、地域のクリニックが「かかりつけ医」として日常的な健康管理や軽度な疾患の治療を担い、より高度な検査や治療が必要な場合には、病院と連携して適切な医療へとつなげていく「地域完結型医療」が基本とされています。そうした中で、クリニックは地域に根ざし、患者さんの生活に最も近いところで健康を支える大切な存在です。
市中病院での勤務医時代、脳卒中をはじめとする専門的な診療にやりがいを感じる一方で、診療の現場を通じて次第に「もっと身近な場所で、患者さん一人ひとりと長く関わりながら支えていきたい」という思いが強くなっていきました。それは、おそらく祖父が開業を決意したときの想いや、父が日々地域に寄り添って診療する姿を見て育ったことが、私の中に自然と根づいていたからだと思います。これからは父と力を合わせ、生まれ育ったこの地域で、より多くの方の健康と安心を支えられる存在になれるよう尽力してまいります。
