「人の役に立ちたい」との思いから医師の道へ。がん専門病院で内視鏡検査・治療の腕を磨き、故郷の沖縄で開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
さまざまな診療科の中から消化器内科を専門とされた理由を教えてください。
一番の理由は、研修医のときに胃の内視鏡検査(胃カメラ)や治療に強く関心をもったことです。消化器内科はおなかの痛みをはじめ、胃炎や便秘など日常的な不調でたくさんの患者さんが受診されます。自分の興味もありましたし、身近な診療科で多くの方の役に立てるのではないかと考え、消化器内科を専攻しました。
実は、私の父が精神科のクリニックを開業していましたので、専攻は精神科にするか消化器内科にするかでかなり迷ったんです。精神科医になって父の跡を継ぐ話もありましたし、こころの病気で苦しむ患者さんを助けることも大切ですが、自分としては「患者さんの身体を診られる医師になりたい」と思い、最終的に消化器内科の道へ進むことを決めました。
以前勤務されていたがん専門病院では、どのような症例を診てこられたのでしょうか?
私が勤務していたがん専門病院は、がんの診断から治療、予防まで高度な医療を提供している国内有数のハイボリュームセンターです。消化器内科は、胃の内視鏡検査・治療を行う上部消化管内科、大腸の内視鏡検査・治療を行う下部消化管内科、肝臓、胆のう、膵臓領域の診断・治療を行う肝・胆・膵内科、抗がん剤を用いた化学療法を行う消化器化学療法科の4つに分かれており、外科を含めた他科と連携しながら消化器がんの診療にあたっています。
私は上部消化管内科と下部消化管内科に所属し、主に早期の消化管がん(胃がん、大腸がん、食道がん)の内視鏡診断と治療を担当しました。早期のがんは、おなかを切ることなく内視鏡で取り除けることが多いのですが、小さいぶん、発見や診断も難しくなります。数多くのがん患者さんの診療に携わりながら、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で手技を磨き、研鑽を積みました。
また、同院では「内視鏡人工知能(AI)を使用した早期食道がんの診断」の共同研究・開発にも携わり、発明者の一員として特許を取得しました。日本でも有数の先進的な医療機関にて、診療だけでなく研究面からも多くのことを学ばせていただき、経験を積むことができました。
その後、故郷の沖縄に戻り、沖縄協同病院に勤務されていますね。
沖縄協同病院は那覇市の地域医療を担う中核病院で、開業までの約2年間、消化器疾患を中心に診療しました。外来はさまざまな症状の方が受診されるので、消化器疾患以外にも発熱を訴えてこられる方や尿路感染症の患者さんなど、一般内科の診療にもあたり、幅広く対応しました。
そして、2023年に貴院を開業されました。どのような想いから開業を決心されたのでしょうか?
いずれは開業して、生まれ育った地域に貢献したいと考えていました。そんなときに当院の前身の「てるきな内科胃腸医院」の院長が後継者を探しているというお話をいただき、ご縁があって継承開院させていただくことになりました。
この場所は周囲に基幹病院も多く、救急の患者さんをすぐに大きな病院に紹介できる好立地であることも私にとって理想的でした。前院長が担ってこられた地域医療を引き継ぎ、2023年3月に名称を「一銀内科胃腸科クリニック」に変更して現在に至ります。