ペインクリニック外来や手術の麻酔管理など麻酔科の医師として研鑽を積んだのち、「患者の痛みに向き合う」診療をめざし開業
はじめに、先生のご経歴をお聞かせください。
先に医学の道に進んでいた兄に影響を受け、自分も医師を志すようになりました。九州大学医学部に進学し、卒業後は九州大学病院の第二内科に入局し、福岡赤十字病院と九州大学病院で研修しました。研修医の2年間は内科だけでなく、外科や救急科などもローテーションしましたが、中でも緊急性が高く一刻を争うような空気感に魅了され、麻酔科に転科することにしました。麻酔の分野を学ぶべく、改めて北海道大学の麻酔科に入局し、この時からペインクリニック外来での診療にも携わるようになりました。
北海道大学には約10年在籍し、麻酔科でペインクリニックのほか、手術室での麻酔管理、緩和ケア、集中治療、無痛分娩などの臨床に従事、2012年からは大学の助教授として後進の育成にも携わりました。その後は都内に移り、東京医療センター、国立国際医療研究センター、済生会中央病院などで、麻酔科医として勤務しペインクリニック外来も兼務してきました。
ペインクリニックとはどのような診療科なのですか?
「ペイン」とは「痛み」という意味ですが、病気や部位にかかわらず、慢性的な痛みを抱える方々が診療の対象となります。おもな対象疾患としては頭痛、肩こり、腰痛、帯状疱疹など一般的なものから、手術後の長引く痛み(遷延性術後疼痛)、CRPS(複合性局所疼痛症候群)、線維筋痛症などあまり聞きなれない疾患も診療しています。ここに挙げたもの以外でも慢性的な痛みは殆どペインクリニックの治療範囲となります。ペインクリニックではこれらの痛みに対して薬物療法だけでなく、超音波ガイド下の神経ブロックや高周波パルス療法、低出力レーザー治療などを行っていきます。
そして2024年に貴院を開業されました。開業を決意したきっかけは何だったのでしょうか?
医師になって約20年、大学病院や総合病院で、患者さんのさまざまな痛みを和らげるための診療に取り組む中で感じたのは、医療者が想像する以上に多くの方が「痛み」に対する不安感や恐怖感を強く感じているということでした。
一方で、大学病院などでは患者さんの待ち時間が長かったり、ペインクニックに注力できる環境が整っていなかったりと、「痛み」に悩む患者さんのニーズに満足に応えられないことにジレンマを抱えることも少なくありませんでした。次第に「開業医という身近な立場でペインクリニックの診療ができる場所をつくるのもひとつの手段かもしれない」と考えるようになり、開業に至りました。この場所を選んだ一番の理由は、やはり交通の便が良く、患者さんが通院しやすいというのが大きいですね。