内科・外科全般にわたり幅広く診療。がんや慢性疾患のフォローアップに対応するほか、往診も実施
2025年7月に「佐瀬総合診療所」を開業されました。貴院の診療内容を教えてください。
当院は内科・外科を標榜していますが、内科・外科の枠にとらわれず、地域のかかりつけ医として、あらゆる症状に幅広く応えていける診療所を目指しています。
具体的には、内科では、風邪や頭痛、腹痛といった日常的な体調不良から、インフルエンザなどの感染症、糖尿病・高血圧・脂質異常症といった生活習慣病まで、一般的な内科疾患を幅広く診療しています。外科では、すり傷・切り傷・やけどなどの外傷に加え、粉瘤やいぼ(尋常性疣贅)、水虫(白癬)、巻き爪(陥入爪)、爪周囲炎、痔核など、皮膚や爪、おしりに関するお悩みにも対応しています。


貴院では、がんや慢性疾患を抱える患者さんのフォローアップにも力を入れていらっしゃると伺いました。
はい。これまで長年にわたり、がんの診断や手術・治療に携わってきた経験を活かし、当院では、がん治療を終えた方の経過観察はもちろん、根治が難しい段階にある患者さんに対しては、緩和ケアにも対応しています。身体的な症状の緩和だけでなく、患者さんやご家族の気持ちにも寄り添いながら支えていくことを大切にしています。
また、慢性心不全や慢性腎臓病、甲状腺機能異常症、パーキンソン病など、慢性的な疾患をお持ちの方の継続的な診療・管理にも取り組んでいます。症状の安定を図りながら、少しでも安心して日常生活を送っていただけるよう、きめ細やかなフォローを心がけています。
前職では在宅医療に取り組まれていましたが、一般外来を中心とした診療所を開業された理由についてお聞かせください。

やまと在宅診療所での勤務を通じて、在宅医療が担う重要な役割を日々実感してきました。とくに、通院が難しい患者さんにとって、ご自宅で安心して医療を受けられる体制は大きな支えになります。しかしその一方で、いくつかの課題にも直面しました。
そのひとつが、在宅医療を受けることによって外出の機会が減り、結果として患者さんの体力や気力の低下につながりやすいという点です。実際、こうしたお悩みを多くの患者さんやご家族から伺いました。だからこそ私は、「通院できる方には、あえて通院してもらえる場所をつくりたい」と考えるようになったのです。外に出て人と会い、医師と話すことが、体力の維持や“元気でいたい”という気持ちにつながる。そう信じています。
もう一つ大切にしていたのが、介護を担うご家族の存在です。在宅医療の枠組みでは、診療の対象は「通院が困難な患者さん」に限られるため、患者さんのご家族、特に介護者の方ご自身が通院可能な場合は、在宅医療で診ることができません。でも、患者さんの健やかな生活を支えるためには、介護をする方の健康こそが土台です。
だから私は、通院可能な方をしっかり診療できる「一般外来」という形をとり、患者さんご本人はもちろん、介護を担うご家族も含めて支えられる診療所を開こうと決意しました。地域の誰もが、年齢や状況に関係なく医療にアクセスできる。そんな場であり続けたいと考えています。
通院が難しい患者さんには、往診にも対応されているそうですね。
はい。ご高齢の方やご病気の影響で通院が困難な患者さんに対しては、地域のかかりつけ医として往診を行い、しっかりと診療を行っています。
往診では、基本的な診察に加えて、疼痛の緩和や褥瘡(床ずれ)の処置、点滴治療、人工呼吸器や気管切開の管理、人工膀胱・人工肛門のケアといった、幅広い医療処置に対応しています。また、在宅酸素療法が必要な方や、がんの進行に伴い終末期を迎えた患者さんへのターミナルケアも行っています。
また、食事を口からとることが難しい方への栄養管理も行っており、胃ろうや経鼻胃管のチューブの管理・交換にも対応しています。さらに、中心静脈から点滴によって栄養や薬剤を投与するためのPICC(末梢留置型中心静脈カテーテル)やCVポート(皮下埋め込み型中心静脈アクセスポート)の造設も可能です。地域医療を支えるうえで、医療と介護の連携は欠かせません。当院でも医療的なケアとともに、介護現場と協力しながら、多くの患者さんが安心して暮らせる環境づくりをお手伝いしていきたいと考えています。