自らを実験台に、より苦痛の少ない「経鼻内視鏡検査」を独自に構築
どのような患者さんが多く来院されますか?
小さなお子さんからご高齢の方まで幅広く、父が診ていた患者さんのお子さん世代、お孫さん世代も来院されています。
父の代からの診療スタイルを引き継ぎ、内科、外科、肛門外科、耳鼻咽喉科、アレルギー科、皮膚科、性感染症内科などまで幅広く診療していますので、患者さんの主訴も実にさまざまです。
風邪や腹痛などの急性期疾患や生活習慣病のような慢性疾患、花粉症などのアレルギー疾患はもちろん、ケガをした患者さんの傷を縫う外科処置も頻繁にありますし、「のどに魚の骨が引っかかって取れない」といって受診される患者さんもいます。
あるいは、「風邪を引いたみたいだけど、湿疹も出ていて」と、内科と皮膚科というように複数の診療科にまたがる症状を訴える方も少なくありません。
また、性感染症で薬物治療を行ったり、病変部を切除したりすることもあります。
より苦痛の少ない「経鼻内視鏡検査」の方法を独自に構築されたと伺いました。
はい。大学病院や総合病院では食道がんや胃がんなどの外科手術を手がける一方で、手術前の病状の把握や手術後の経過観察のために内視鏡検査を行っていました。
ただ、口から胃カメラを挿入していく「経口内視鏡検査」は、舌の付け根に触れると『オエッ』となる咽頭反射を起こしやすいため、苦痛に耐えながら検査を受けられる患者さんが多かったんです。私自身も何回か受けたことはありましたが、やはり苦痛でしたね。
もっと楽に胃カメラ検査を受けてもらえないかと考えていた矢先、これまでの約半分の細さの内視鏡を鼻から挿入する検査方法があることを知りました。今でこそ「経鼻内視鏡検査」が一般的に広まってきましたが、その頃は、検査方法や麻酔方法がまだ確立されておらず、ほとんど行われていない検査でした (笑)。
そこで、私自身が実験台となり、自分で自分の鼻腔内に麻酔をして「麻酔後○分だと入れるときに痛くない」など、局所麻酔後の作用時間について研究・観察を重ね、麻酔薬を鼻腔内にスムーズに投与できる「カテーテル付きの局所麻酔注入器」を独自開発しました。
そして、これを使い、自分自身に鼻から胃カメラを挿入、モニターを見ながら鼻腔、食道、胃、十二指腸までの検査を繰り返し、苦痛の少ない検査方法を見出してきました。
当院でも、こうして身を持って体験した、より苦痛が少ない内視鏡検査を提供しており、医療従事者自身が自分の検査に来られたり、周辺地域の方々以外にもホームページをみて遠方から来られたりする患者さんもいます。
経鼻内視鏡検査の方法を解説した医師向けの本も上梓されたそうですね。
はい、消化器を専門とする医師向けに、経鼻内視鏡検査の入門書を執筆しました。まだ検査方法が確立されていない頃、私の取り組みを知った医師仲間が検査方法を学びたいと見学に来たり、体験しに来たりしていて、そのうちに先輩医師から出版社を紹介され、本を出したほうがいいと勧められて、、、。
雨宮先生の経鼻内視鏡検査に対して患者さんの反応はいかがですか? 工夫されていることも教えてください。
一度経鼻内視鏡検査を受けると、ほとんどの患者さんが次回も鼻からの検査を希望するため、当院では毎年リピーターが増えています。また、以前勤務していた国立相模原病院で経鼻内視鏡検査を受けた患者さんで、今でも当院に検査を受けに来てくださっている方がいることを考えると、患者さんの満足度は高いのではないかと思っています。
経鼻内視鏡検査のメリットの一つは、医師と会話しながら検査が受けられることです。詳しい説明は検査終了後に行いますが、検査中もモニターを通して、患者さんがご自分の状態を確認することができるので、ていねいに説明したり質問に答えたりすることにより、不安を感じさせないようにしています。
また、特に日本人のがんの中でも罹患者数が多い「胃がん」を早期発見するには、一年に一回は内視鏡検査を受けていただきたいと考えています。その意味では、検査時の患者さんの苦痛や負担が少ない検査を提供することで、「胃カメラの検査は二度と受けたくない」ではなく、「一年に一回は受けておこう」という患者さんが増えることを期待しています。
なお、万が一、病変が見つかった場合は、検査中に組織を採取して病理組織検査を施行し、専門医による治療が必要な場合は、患者さんのご希望を踏まえて連携病院にご紹介させていただきます。
肩や腰などの「痛みの改善」にも積極的に取り組まれていますね。
肩こりや腰痛、坐骨神経痛など痛みを抱えている患者さんに対して、血行不良を改善するために全身マッサージを施す「ウォーターベッド」や、近赤外線照射器、マイクロ波治療器、レーザー治療器による施術を提供しています。継続的に通院していただくことで、症状の改善が期待できます。これらは私の代になって一新したのですが、これからも、患者さんにとってメリットのある検査や治療法があれば、積極的に取り入れるようにして、地域の方々の健康に貢献していきたいと考えています。