乳幼児の重症中耳炎やアレルギー性疾患の舌下免疫療法、補聴器外来、めまい、気管支喘息など専門診療を中心に、急患対応や予防接種など患者のニーズに幅広く対応
現在、どのような患者さんが多く来院されていますか?
【浩志副院長】当院には、生後10日ほどの赤ちゃんから90代のご高齢の方まで、幅広い年代の患者さんが来院されます。私自身、50年以上ここで診療を続けてきましたので、親子4世代にわたって通ってくださるご家族も少なくありません。家族ぐるみで診させていただくことも多く、耳鼻咽喉科医というより“ファミリードクター”のような存在だと感じています。
【祥典院長】最近は、小児科医院からの紹介も含め、風邪(上気道炎)をきっかけに急性中耳炎を発症するお子さんが特に多いですね。そのほかでは、30代以降の更年期世代の女性でめまいに悩む方、花粉症やアレルギー性鼻炎に対して舌下免疫療法を受けられる方、さらには睡眠時無呼吸症候群や気管支喘息の患者さんもよく受診されています。
重症化した中耳炎の場合、どのような治療を行っているのでしょうか?

【祥典院長】重症の中耳炎では、まず原因となる細菌を特定するために細菌培養検査を行います。近年は、一般的な抗菌薬が効きにくい耐性菌が見つかるケースも少なくありません。症状が強い場合には、鼓膜に小さな切開を加えて膿を排出する「鼓膜切開術」を実施します。当院では、この1年間で700件を超える鼓膜切開術を行ってきました。中耳炎を適切に治療しないと、将来的に難聴の原因になったり、慢性化して治りにくい「真珠種性中耳炎」へ進展したりする恐れがあります。そのため、早期に正確な診断を行い、一人ひとりに適切な治療を提供することを心がけています。
めまいに対しては、どのような診療を行っているのでしょうか?
【祥典院長】まずは問診で、「いつ・どんなときに・どのようなめまいが起きるのか」を丁寧に伺います。内耳の異常や難聴が疑われる場合には、めまい診断用の眼鏡(フレンツェル眼鏡など)を用いた眼振の観察や聴力検査を行い、診断を確定します。めまいの原因は多岐にわたりますが、その中でも患者数が多い「良性発作性頭位めまい症」に対しては、薬物療法に加え、運動療法のパンフレットをお渡しし、ご自身でも治療や予防に取り組んでいただいています。
【浩志副院長】耳の閉塞感に伴うめまいの場合は、鼓膜の奥に空気を送り込む「中耳加圧療法」が有効で、症状が改善することがあります。注意が必要なのは、めまいに激しい頭痛や吐き気、手足のしびれなど、脳に関連する症状が併発しているケースです。このような場合は緊急性が高いため、すぐに高次医療機関をご紹介します。ただし、この地域は受け入れ先の病院が限られているため、岡山市内まで紹介範囲を広げたり、場合によってはドクターヘリを要請したりして対応しています。
花粉症やアレルギー性鼻炎などに対する診療についても教えてください。

【祥典院長】指先からの一滴の血液で41項目のアレルゲンを短時間で調べることができるドロップスクリーン検査を導入していますので、小さなお子さんでも、アレルギー検査を楽に受けていただけると思います。治療法としては、5歳以上から始められる「舌下免疫療法」を希望される方が増えていますね。さらに、鼻づまりが強く日常生活に支障がある場合には、炭酸ガスレーザーを鼻粘膜に照射し、症状の軽減を図る治療も行っています。症状やご希望に応じて、幅広い選択肢の中から適切な方法をご提案しています。
そのほかに力を入れている診療はありますか?
【祥典院長】睡眠時無呼吸症候群や気管支喘息、補聴器のご相談など、患者さんのニーズに応じて、診療内容を拡充しています。特に睡眠時無呼吸症候群については、この地域で専門的に診ている耳鼻咽喉科が少ないため、当院が積極的に対応しています。
【浩志副院長】気管支喘息はアレルギー性鼻炎を併発するケースが多く、当院にも多くの患者さんが通われています。治療はステロイド吸入薬が基本ですが、十分な効果が得られない場合には、生物学的製剤を用いた治療も可能です。
【祥典院長】あとは、扁桃周囲膿瘍のような急性の感染症では、点滴治療や膿瘍切開・排膿処置を行ったり、突発性難聴や軽度の顔面神経麻痺に対しては点滴治療を実施しています。急患についても、めまいや鼻出血で救急搬送される患者さんが多く、可能な限り迅速かつ適切な処置を行っています。